映画『THE GUILTY/ギルティ』(2021)ネタバレ&考察【リメイク版】

ギルティ(2021)_ アイキャッチ

映画『THE GUILTY/ギルティ』(2021)のネタバレ&考察を紹介します。

本作は2018年にデンマークで製作された映画『THE GUILTY/ギルティ』のリメイク版です。

911コールセンターに入った1本の通報。

音声だけを頼りに事件を紐解いた先には衝撃の真実…。

映画『THE GUILTY/ギルティ』(2021)について詳しく知りたい人は、ぜひ本記事を参考にしてください。

目次

映画『THE GUILTY/ギルティ』(2021)の作品情報

Text showcasing several emergency calls in red font overlap the face of a man. The words "Listen" and "Carefully" are highlighted in white letters. In the bottom left corner is "The Guilty" in large red letters.
By IMP Awards / 2021 Movie Poster Gallery / The Guilty Poster, Fair use, Link

原題The Guilty
タイトルTHE GUILTY/ギルティ
監督アントワン・フークア
脚本ニック・ピゾラット
公開年2021年
キャストジェイク・ジレンホール
ライリー・キーオ(声の出演)
ピーター・サルスガード
イーライ・ゴリー ほか
制作国アメリカ
上映時間91分
ジャンルサスペンス

映画『THE GUILTY/ギルティ』(2021)のあらすじ

見えない現場、電話越しの音だけを頼りに事件を追え

ある事情により、現場を離れて緊急司令員として働く警官のジョー。

その日は大規模な山火事が発生し、コールセンターは混乱状態だ。

そこに女性から1本の通報が入る。

最初はイタズラ電話かと思われたが、その女性は誘拐事件の被害者のようだ。

彼女を救うため、ジョーは電話越しのわずかな情報から手がかりを集めていく。

そして最終的にたどり着いたのは、思いもよらぬ真実だった……。

映画『THE GUILTY/ギルティ』(2021)の感想【ネタバレなし】

鬼気迫る声と表情の演技に引きつけられる!圧巻のワンシチュエーション映画

本作は、ほとんど主人公・ジョーと通報者の声だけで構成されています。

通報者の話以外からは、現場の様子がまったくわかりません。

しかし、通報者の声からただならない焦りや恐怖が感じられ、ぐっと引き込まれました。

序盤での気だるそうなジョーと、通報者の切羽詰まった声との温度差が際立ちます。

舞台は90分間ほぼコールセンター1か所

しかもジョー以外の人物はほとんど画面に姿を見せません。

それにもかかわらず飽きさせることなく、声だけで現場の緊張感や混乱を表現する俳優陣には脱帽します。

現場の様子が目に見えないからこそ想像力と不安がかき立てられ、作品にのめり込みました。

以下、ネタバレを含みます

主な登場人物とキャスト

映画『THE GUILTY/ギルティ』(2021)の主な登場人物とキャストを紹介します。

ジョー(演:ジェイク・ジレンホール)

911コールセンターで働く警察官。

もとは現場担当の刑事でしたが、ある事件を起こしたことでコールセンターに異動しました。

現場復帰を望んでおり、緊急司令員の仕事にうんざりしている様子。

翌日に重要な裁判を控えているよ。

すぐカッとなったり、ミスを他人のせいにしたり、厄介な性格です。

妻・ジェスと幼い娘・ペイジとは半年前から別居中。

エミリー(演:ライリー・キーオ)

誘拐事件の被害者。

6歳の娘・アビーと、幼い息子・オリバーがいます。

娘に電話をかけるフリをして911に通報したようです。

ヘンリー(演:ピーター・サルスガード)

エミリーの夫。

刑務所から出所したばかりで、傷害と飲酒運転の前科持ち

妻と子どもたちとは別居しています。

リック(演:イーライ・ゴリー)

現場担当のジョーの相棒。

ジョーが現場を離れるきっかけとなった事件のことを知っています。

翌日の裁判の重要な証人です。

映画『THE GUILTY/ギルティ』(2021)の結末

映画『THE GUILTY/ギルティ』(2021)のあらすじを結末までネタバレありで紹介します。

エミリー誘拐事件の発生

ジョーはエミリーにさまざまな質問をし、「YesかNo」で答えるように指示する。

どうやら彼女は知り合いの男に誘拐され、白いバンで移動しているようだ。

ジョーはエミリーの電話番号から自宅の電話番号を割り出し、電話をかける。

電話に出たのはエミリーの娘・アビーだった。

アビーによると、エミリーを連れ去ったのはヘンリーだという。

弟のオリバーはナイフを見て泣いていたが、今は眠っているそうだ。

調べてみると、ヘンリーには傷害と飲酒運転の前科があった。

危険を感じたジョーは、エミリー宅へ警官の派遣を要請し、アビーに弟のそばで待つよう指示する。

ジョーはヘンリーに電話をかけ、居場所を問い詰める。

ところが、一方的に電話を切られてしまった。

そこで、相棒のリックにヘンリー宅へ向かい、何か手がかりを集めるよう依頼する。

その後、エミリー宅に到着した警官は、血まみれの状態で息絶えたオリバーを発見した。

ヘンリーへの追及、そして誤解

頭に血がのぼったジョーは、再びヘンリーに電話をかける。

「お前がやったことはわかっている、諦めて警察を呼べ」と言うと、「それはダメだ」と答えるヘンリー。

そんなヘンリーに「お前なんか死刑になれ」と言い捨てると、電話は切れてしまった。

エミリーに電話をかけたジョーは、バンのサイドブレーキを引いて脱出するように指示。

しかし作戦は失敗して、エミリーはバンのトランクに閉じ込められてしまった。

ジョーはパニック状態のエミリーをなだめつつ、トランクが開いたらヘンリーを殴って逃げるように指示する。

しばらくすると、バンが止まった。

ジョーの指示どおり、エミリーはヘンリーを殴って逃走したようだ。

その直前、彼女は気になる言葉を口にした。

「オリバーのお腹にヘビがいたから私が出してあげた」

オリバーをナイフで刺したのはエミリーだったのだ。

そこへリックからの着信。

リックによると、エミリーとヘンリーは親権をめぐり争っており、ヘンリーは面会権を失っている。

白いバンが向かっている先には精神病院があり、エミリーはそこの患者だというのだ。

結末

再びヘンリーに電話をかけると、状況が明らかになった。

エミリーは精神病院で投薬治療を受けていたが、数ヶ月前からお金がなくて薬を切らしていた。

そのせいで精神状態が悪化し、オリバーを殺害してしまったのだ。

そこへエミリーから通報が入る。

彼女は「オリバーのもとへ行く」と言い、自殺しようとしていた。

そんな彼女に、ジョーは自らが犯した罪を告白する。

以前、ジョーは勤務中に19歳の青年を射殺したのだ。

現場を離れたのはこの件が原因であり、明日この件についての裁判が開かれる。

「エミリーまで殺したくない」と必死に説得していると、彼女のもとに警察が到着。

エミリーは無事に保護された。

そしてICUで治療を受けていたオリバーも一命をとりとめたとの連絡が入る。

その後、ジョーはリックに電話をかける。

もともと明日の裁判でリックはジョーが有利になる証言をする約束をしていた。

もし真実を話せば刑務所行きになり、娘にも会えなくなるからだ。

しかし、ジョーは裁判で真実を話すよう涙ながらに頼むのだった。

翌日の裁判で、ジョーは有罪判決を受けた。

映画『THE GUILTY/ギルティ』(2021)の感想【ネタバレあり】

音声だけでここまで引きつけられるなんて、すごいとしか言いようがありません。

目まぐるしく変わる状況、焦り、苛立ち、追い詰められていく心情…。

すべてが表現されていました。

また、ジョー役のジェイク・ジレンホールの演技が素晴らしかったです。

どんどん窮地に立たされていく彼の様子は、見ているこちらまで苦しくなってしまうほどでした。

ただ、ジョーが嫌なヤツすぎて絶対に一緒に働きたくないです(笑)。

一緒にビールも飲みに行きたくないです。

そう考えるとジョーの隣の席にいた彼は、きっと心の広い人なのでしょう。

でもエミリーの通報で刑事の血が騒ぎ、「YesかNo」で情報を引き出していくシーンはかっこよかったです。

あと娘を愛するパパなのもいいところ。

ラストで相棒のリックと電話するシーンは胸が痛くなりました。

娘に会えなくなってしまう。

もう現場に復帰することは絶望的。

さまざまな感情が渦巻いていたのでしょう。

オリバーもエミリーも無事だったことだけが救いです。

映画『THE GUILTY/ギルティ』(2021)の考察

映画『THE GUILTY/ギルティ』で気になったシーンを考察しました。

考察1:思い込みによるミスリード

本作では、さまざまなシーンで思い込みによるミスリードが張り巡らされています。

コールセンターでは現場の様子が見えないので、音声だけを頼りに判断しなければなりません。

しかし、実際には音声と”思い込み”によって判断してしまいます。

まず、エミリーを誘拐したのは夫のヘンリーであることが判明しました。

ヘンリーは傷害と飲酒運転の前科持ち。

そして娘のアビーの話から、ナイフを所持している可能性が出てきます。

さらにエミリー宅へ様子を見に行った警官は、血まみれの息子・オリバーを発見。

ここまでの情報から、ジョーは「ヘンリーが息子を殺害後、妻を誘拐している」と判断しました。

見ている側もヘンリーがクロだと思うよね。

ところが、実際に息子を殺害したのはエミリーです。

たしかにアビーは電話で「ナイフ」と言いました。

しかし、ナイフを持っていたのはママともパパとも言っていません。

それなのにヘンリーが加害者であると決めつけてしまったのです。

そのあと「車を止めて場所を教えろ」と言うジョーに対して、ヘンリーは「できない。そうしたらその後どうなる?」と問います。

ジョーは「お前は刑務所行きだ」と答えますが、このやりとりもジョーの思い込みによるもの。

ヘンリーの言葉の意味は、「エミリーが警察に捕まったら、その後のアビーはどうなる?」というものでした。

彼は自分ではなく、娘の心配をしていたのです。

しかしヘンリーが加害者だと思っているジョーは、彼が自分の心配をしていると決めつけてしまいました。

冷静に情報を取捨選択し、事実にたどり着くことがいかに難しいか思い知らされます。

考察2:ラストシーンでジョーはなぜ罪を認めた?

ラストシーンで、ジョーは相棒のリックに法廷で真実を話すように頼みます。

現場復帰を望み、口裏を合わせて罪を逃れようとしていたジョーは、なぜ罪を認めたのでしょうか。

それはエミリーとの会話を通して自分を客観的に見つめ直し、犯した罪と向き合えるようになったからです。

ジョーとエミリーには共通点があります。

同年代の娘を持つ親であること。

娘と会えなくなる不安を抱えていること。

ジョーはエミリーと自分を、アビーと自分の娘を重ね合わせていました。

しかし、ジョーは自身の間違いに気づきます。

加害者はヘンリーではなくエミリーだったのです。

ジョーが弟のそばに行くように指示したため、幼いアビーに凄惨な現場を目撃させてしまった。

さらには無実のヘンリーに危害を加えてしまった。

都合が悪いとすぐに他人のせいにするジョーですが、これらが自分のせいであることからは逃れようがありません

そして、息子を殺害したにもかかわらず、悪いことをした自覚がないエミリー。

青年を殺害したにもかかわらず、リックに嘘の証言を頼み、なかったことにしようとしているジョー。

罪の意識がないこともジョー自身と重なるのです。

ジョーは自問自答をくり返します。

エミリーは、殺したのはヘビのせいだと言っている。

しかし、客観的に見れば彼女が息子を殺害したのは事実。

では、自分はどうだ?なぜ罪を犯した?誰かのせいか?

客観的に見れば、ジョーが罪を犯したこともまた事実なのです。

そしてジョーは、自分も同じように罪を抱えていることをエミリーに告白します。

自分と同じ状況に立つ彼女に対して、つい言葉があふれてきたのでしょう。

なんとかエミリーを止めたいという気持ちもあったんだろうね。

ジョーは青年を殺害したさまざまな理由を並べます。

ジョーが銃を持っていたから

青年が人を傷つけていたから

懲らしめたかったから

そもそもは自分の父親のせい

そう言いながらも、どれも本当の理由ではないと葛藤します。

エミリーが「ヘビのせい?」と問うと「そうだよ」と答えるジョー。

ヘビのせいであってほしい。

でもそんな理由ではないことはよくわかっています。

そしてトイレの鏡で自分を見つめ、あらためて自分に問いかけるのです。

青年を殺害したはヘビのせいなのか?

………違う、自分のせい

きっと、ここでようやく自分の罪と向き合うことができたのでしょう。

考察3:追い詰められていく心理描写

ジョーの表情や声以外からも追い詰められている様子が感じられます。

序盤のジョーは、コールセンターの自席で通報を受けていました。

アビーとの通話後、まわりに人がいない個室へ移動。

さらにヘンリーに電話する際は個室のブラインドを閉めます。

これらの行動は、どんどん追い詰められていくジョーの心情を表現しているのでしょう。

交通課も仲間の警官も頼りにならず、エミリーを救えるのは自分だけだと感じ、ひとり暗闇に追い込まれたような状態です。

耳鳴りや喘息の発作、眩暈などの症状にも、ひっ迫した心理状態が表れています。

考察4:山火事と水族館の意味

誘拐事件の裏で進行する山火事と、エミリーが口にする水族館というキーワード。

この2つは何を意味しているのでしょうか。

まず山火事は、ジョーの心情を表しているのだと思います。

苛立ち、焦り、不安、動揺…。

ジョーの心のなかに渦巻く感情を燃え盛る炎として表現しているのです。

もちろん、切迫した状況を作り出す役割もあります。

山火事によってコールセンターも警察も救急隊も混乱状態。

誘拐事件解決の大きな障害になりました。

そして水族館は、ジョーの心のなかで燃え盛る炎を鎮める水です。

実際、エミリーと水族館の話をしているとき、ジョーは冷静さを取り戻していました。

映画序盤で、ジョーがコーヒーを入れに行く際、壁に貼られたクジラの写真が目に入ります。

これが水族館につながる伏線になっていました。

考察5:なぜヘンリーは妻を誘拐した?

ヘンリーは息子を殺害した妻を見て、警察に通報せずに病院へ連れて行くという判断をしました。

なぜヘンリーは警察に通報しなかったのでしょうか。

その理由は2つあります。

1つは、警察に通報しても何の助けにもならないから

ヘンリーは「妻は医者も弁護士も福祉士も手に負えなかったのに、警察に何ができる?」と言います。

おそらくエミリーはこれまでもさまざまな問題を起こしていたのでしょう。

その度にヘンリーが各所を駆けまわっていたのかもね…。

ところが、夫婦を救える場所はどこにもなかったのです。

もう1つは、もし通報して妻が逮捕されたら、娘が取り残されてしまうから

ヘンリーは出所したばかりでお金がなく、娘との面会権もありません。

妻が捕まったら娘を育てる人がいなくなるのです。

それなら妻が刑務所に何年も入るより、病院に入院したほうが早く出られるのではないか。

そう考えたとしてもおかしくはありません。

前科持ちの悪人と思われているヘンリーですが、娘を思う気持ちは本物なのです。

リメイク版『THE GUILTY/ギルティ』(2021)まとめ

今回は、映画『THE GUILTY/ギルティ』(2021)のネタバレ&考察を紹介しました。

電話の音声から次々と明らかになっていく状況。

予想できない衝撃の真相。

90分間、目と耳がまったく離せませんでした。

オリジナルとリメイク版の違いを比べてみるのもたのしそうですね。

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